Book Lounge Tagomago甲府店

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夏!学生!青春!ときめき!なBL漫画紹介(装丁へのLOVE♡を添えて)

山梨県内もついに梅雨明けしましたね。

なんだかまばたきしているあいだに冬と春がすっ飛び蝉が鳴き始めたようにしか感じられず、戦々恐々としています。ぼんやりしているあいだに2020年後半という異世界に転生していた件!(笑)(笑)(笑)

 

さて、夏には夏のよきBL、ということで、今回は夏に読みたい青春学生BL漫画作品をご紹介してまいります。かの清少納言先生も「春はあけぼの、夏はLOVE♡」とEXITがやってそうなマイムをしながら言ってたと思うのですが、やはり夏に読む青春を取り扱った作品はひときわLOVEが極まります。氷をたっぷり入れた麦茶をかたわらに用意して読んでください~。

 

 

たしさん『アイスクリームライン』

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まず見てほしいこの装丁。夏!!青春!!!!以外の何者でもない爽やかな装丁を、上下巻で青と赤にわけることで朝日から夕日までの時間の流れも表現してくださっている(個人の感想です)おかげで、情緒レベルがいきなりカンストしています。表紙だけでわかる、こいつは只者じゃねえ、ヤベエ作品にであってしまったぜ……感。本屋でガタガタ震えちまったよ。通報しないでくれな。

 

海辺の街を舞台に、中3の夏からはじまり季節を巡りながら変わっていく二人を描写した作品です。光太くんはサーフィン、満くんは舞いとそれぞれに打ち込む対象があり、またそれぞれに自分の力の及ばなさや諦めも覚え、互いの存在に触発されたり救われたりしつつ成長していくお話です……つまり「「「Love」」」ってワケ…………

 

互いがサーフィンをしているところ、舞いをしているところを実際に見るシーンは、どちらもとんでもなく鮮烈。まるで自分が目撃したかのように錯覚します。見て……ないんだよな?私はこの世界に存在してないんだよな?あれ?いや、やっぱり私実際に目撃してるんじゃないかな。記憶あるもん。光太くんと満くんにそれぞれスイカバー奢った気がする。とにかく記憶があるもん。

 

何よりぐっときたのは光太くんの「本当に悔しいってきもちは、一生懸命やったことある奴にしかわからない」という言葉で、この感性を共有しているからこそただのクラスメイトから「共通言語を持った二人」として強固な絆が結ばれていくのほん……ほんとに……何度読み返しても都度100リットル泣いてしまうので、そろそろ店の前に小さめの池くらいなら作れる気がします。

 

 

市川けいさん『ブルースカイコンプレックス』

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タイトルがすでにエモの領域ですね、夏、青春、モラトリアム等々を煮詰めて抽出した一番美しい、いっときの輝きだけを形に残して言葉に落とし込んでるじゃんハーイこの時点で10000ポイント贈呈です!おめでとうございます!私がバーテンダーだったらブルー系のリキュール使ってやたらきらきらした「ブルースカイコンプレックス」って名前のカクテル作って夜な夜な思いを馳せながら浸ってしまうところだったね。あっぶね。

 

真面目!品行方正!なメガネくんと何かと問題児なヤンキーくんという、どシンプルな学校生活で完結していたら交わらなかったかもしれない点が、そ、そこまで交わっちゃうんですか///というくらいドチャドチャに交わった結果最高に最高な歴史を生み出してくれたという二人の親御さんに毎年お中元贈りたくなるレベルの名作。1~5巻の本編のほか、番外編として「インディゴブルーのグラデーション」も発表されています(画像参照)。

 

もともと同人誌として発表された作品をレーベルから刊行したタイトルなのですが、この装丁があんまりにもあんまりにも好きすぎて見ているだけで気づいたら頬をひとすじの線が伝っており、「コレガ……『ナミダ』……?」と心をはじめて通わせたロボットみたいなリアクションをしてしまいます。だってあまりにも美しすぎない?空気が伝わってくるじゃん、湿気の多い日中の空気が少しずつ冷えていくときの匂いがするじゃん、そうしたらもう二人がそこに存在しているジャン…………そんなの泣くだろうがよ…………A4の5000倍サイズのポスターにしてくれ……天井に張って眠りにつきたいから………。

 

あとこの作品の面白さの一つとして「1巻を読んだ段階ではまだ攻守ポジションが分からない」という点を挙げたいです。続刊ではじめて一線をよいしょー!と越えるまでは、終始どっちともとれる雰囲気。青春学生モノはセックス描写のない作品も多い中で、最初はプラトニック、途中からどエロくなっていくのがまじでありがたすぎて窓開けて「ありがとーーーーー!!!!」と叫んでしまう。二人が本当に対等であることも十分に伝わってきて、さらにときめきが増すのでウ~~~ンどっちだろな~~~と巡らせながら読んでみるのもいいかもしれません。

 

古矢渚さん『君は夏のなか』

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こちらの装丁は「夏」を一枚絵で表現してください、というお題に対するベストアンサー殿堂入りを果たしていると思います。「「夏」を一枚絵で表現してください」がケータイ大喜利のお題だったらこんなのバリサン越えてフリーWi-Fiレベルの大正解だよ……。そして簡潔ながら確実に胸をつかんでくる帯。あまりにも完成されていて、aikoの『青空』を聴きながらぼんやり眺めていたら8億年の時が過ぎ去っていました。

 

映画という共通の趣味をきっかけに意気投合した二人が「夏休みを利用して映画の舞台となっている場所を聖地巡礼する」という目的のもと、ゆるやかな逃避行へと駆け出していくお話。そんなのさあ!!我々が憧れる学生のもっとも正しい、健康的な姿じゃん!!!そりゃ急にキレたくもなるわ!!!たまんねえな!!!!!!

 

無人の駅に降り立ったり、美味しいものを食べたり、川に入ったり、雨に降られたり、そのすべてがウワ~~絶対数十年後も大事な思い出として残ってるやつだ~!というときめきに溢れていて旅行欲もかきたてられます。旅行に連れ出すのは佐伯くんのほうで、そんな佐伯くんを精神的に引っ張りあげるのは渉くん、というのもむちゃくちゃ理想の関係。そんで最後のモノローグ「その映画のラストシーンは海で~……」これ、マジマジのマジで、天才の所業です…………。映画一本見終わったんかな?という読後感に存分に浸れる終わり方……ラストまで愛たっぷり……。

 

初回限定版の小冊子では、本編の前後にあたる冬や春のお話も収録されているのですがこちらもまた夏とは違ったときめきに溢れています。季節が一周しても二週してもこうやって彼らは彼らの道を進んでくれるだろうと想像できる余白がある、その事実だけで心安らかになってしまう……𝒌𝒊𝒔𝒔………

 

月子さん『トコナツ』

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『彼女とカメラと彼女の季節』『つるつるとザラザラの間』『最果てにサーカス』などの作品で知られる月子さんによる、「夏だから○○しよう」というタイトルに従い、夏だから夜更かしして遊んでみたり、プールに行ってみたり、肝試しをしてみたり、ウェイウェイ遊ぶ男子高校生たちのお話。厳密にはBLレーベルの作品ではなく、「NOT BL」として売り出されている作品なのですが、読んでからそう知らされれば「エッ違うの!!?」となるくらいにはナチュラルにニアリーBLなのでご紹介させていただきます。

 

NOT BLの教えに従い一般誌作品としてとらえるにはちょっとこう、この、表紙からいきなりだだもれる色気、エッ、これ、いいんですか、えっ、やぶさかではないけども、な、なに…………とたじろいでしまいそうですが、今作のテーマは「男子校にまぎれこんでいる隠された女性性を持った男の子」ということで、これが「BLじゃない」からこそ「BL的にめちゃくちゃウマい」という究極のパラドックスをはらんでいる作品なのです。だから本当、難しい話なんですけど、私もBLとは非なるものとして消化する方が絶対にいいな……と思ってはいて、だけどここで紹介してえよだってみんながだいすきなやつなんだもん……という気持ちもあり……難しいんですよ……とにかく……もう東大卒くらいじゃないとこの問題取り扱えないんじゃないかと思うくらい難しいんです……(アホが想像する「頭いい」イメージの貧相さがウッカリ露呈)

 

そして1巻のあとがきに書かれている作者・月子さんの何気ない一文で、世界が簡単に反転するのがこの作品のすごいところです。そこまで読んだらもう不可逆の法則、何度読み返しても「そういう可能性もあるのね〜!!」という気持ちに侵されてしまうという完成度の高いミステリーのトリックみたいな経験ができるので、ぜひあとがきまで読んでください。

 

ということで、暑い季節に読みたい青春学生BLでした。おすすめあったら教えてくだたい!